拡大先願(pre-AIA 35 U.S.C. 102(e)又はAIA 102(a)(2))について、米国と台湾と中国との差異がありますか?


Source:広流知財情報
2016/05/31
 


拡大先願(pre-AIA 35 U.S.C. 102(e)又はAIA 102(a)(2))について、米国と台湾と中国との差異がありますか?
 
 
 
 
 
 
出願戦略及び明細書作成戦略に影響するほど米国と台湾と中国との差異が大きくありますので、注意を払うべきだと思われます。
AIA 35 U.S.C 102(a)(2)はある特許出願のクレームに係る発明を開示する「先に出願しかつ後で公開された特許出願」(いわゆる日本の拡大先願)を定義し、その出願は審査における適法な先行技術とされます。102(b)(2)(A)は、102(a)(2)に規定された先行技術により開示される特許対象は発明者からは直接に又は間接に得たものである場合、その先行技術は例外であってクレームに係る発明を拒絶の用いることができないことを規定しています。
台湾実務について:
専利法第23条に基づき、拡大先願はその後の出願のクレームに係る発明の新規性を拒絶するのに適法な先行技術です。注意すべきなのは、先の出願の出願者が後の出願の出願者と同一である場合、その先の出願は専利法第23条に規定された先行技術としては、適用をされません。
なお、上記の「先に出願しかつ後で公開された特許出願」とは、審査対象になる出願の出願日より先に出願し、その審査対象になる出願の出願日より後に公開公報又は登録公報に掲載されるものです。審査対象になる出願に優先権が主張される場合、その出願日は最先の優先権日とされます。
中国実務について:
衝突出願とは、専利法第22条第2項及び2010年版の審査指南第2部分第3章2.2に定義されており、審査対象になる出願のクレームに係る発明を開示し、あらゆる実体(事業体又は個人)に審査対象になる出願の出願日より先に出願され、その出願日より後に公開される出願です。衝突出願は審査対象になる出願のクレームに係る発明の新規性をなくします。中国の衝突出願は米国の102(a)(2)に定義された先行技術を含み、審査対象になる出願の出願人と同一の出願人がなした出願を更に含みます。これは自己衝突と言います。
上記衝突出願の定義によると、実務家は上位発明及び下位発明を含む明細書を作成する時に注意を払うべきです。下記状況においては、出願人は上位発明について特許を受けることができません。
発明者が上位発明を発明し、その下位発明を保護するようにそれについてSIPOに第一の出願を出願しました。そして、その発明者は他の下位発明及びそれらの上位発明を発明し、その下位発明及び上位発明を保護するようにそれらについてSIPOに第二の出願を出願しました。専利法第22条第2項によれば、第一の出願は第二の出願のクレームに係る上位発明の新規性を失わせる第一の発明を開示したので、第一の出願は第二の出願のクレームに係る上位発明に対する衝突出願になります。後に発明された第二の出願の上位概念が先に発明されて第一の出願に開示される下位概念により新規性を喪失することを避けるため、実務家には最先の出願において論理的に上位概念を書くことが検討できます。
しかしながら、出願者に有利なこともあります。衝突出願は新規性にのみ適用でき、他の先行技術と組み合わせて審査対象になる出願に係る発明の進歩性を失わせることはできません。すなわち、先の出願が後の出願のクレームに係る発明のそれぞれかつ全ての要素を開示する場合のみ、後の出願のクレームに係る発明は新規性を失わせます。35 U.S.C. 103は35 U.S.C. 102に規定された先行技術の全てをお互いに組み合わせてクレームに係る発明の進歩性を失わせることができると規定していますが、台湾及び中国の規定とは異なります。
 
(Image source:Michael PardoCC0 1.0)


 
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